第11章 珪線石の足音

「んで、なんでダイエット？」

『うわぁ全然話聞いてくれない』

「こっちの台詞だよ、何飯抜こうとしてやがる。それで体壊してたら元も子もないだろうが」

『いやいや、体壊すより優先することって色々あるじゃないですか。ていうか私体壊してないし「それなら俺のところに今泊まってねぇだろ」ええー、そうでしたっけ』

「…………俺は、おまえが美味そうに好きなだけ好きなもん食ってるところは好きだけど」

＿＿よく食うな、驚いた＿＿

あの時の彼の言葉と、何か違うような気がした。

『……え？……なんですかいきなり』

「別に？腹一杯食ってる時が一番可愛いよおまえ」

『可愛いって言った』

「可愛いだろリアは」

『…………あれぇ、？？♡』

想定外の褒め言葉に顔が熱くなる。
頬を押さえてなんとか変化を抑えるが、今もしかして可愛いって言ったかこの人、私に。

中也さんに、可愛いって言われた。

「リアちゃん、今日は何食べたい？」

『えっと、えっと』

「好きなだけ食べていいからなあ？ほんと可愛いんだから」

『……？じゃあ、その…………サンドウィッチ？？』

「おう、いい食パン手配するから任せろよ。何斤くらい食べたい？」

本当に、引いてない。
それどころか心の底から嬉しそうに撫でられる始末。

どういう事だ、本当にこれは中也さんなのだろうか。

『……二斤？』

「遠慮してない？」

『ご、五斤』

「よし、それでも足りなかったら他にもなんでも作ってやるからなぁ♪」

なんで朝からこんなに機嫌がいいんだろう。
ご飯、好きなだけ食べるなんて……色々な諸々の維持費が凄まじいだろうに。

それにこの人の場合は作ってくれてしまっているくらいなのに。

「んで、まだダイエットするつもり？」

『！？し、しなくていいんでしょ……？……あ、えっ？どっち？？』

「しない方がいいよ、もっと食べて」

『じゃあ……じゃあ、しない…………方が、中也さんが嬉しいなら……しな、い』

よくできまちたと言わんばかりに撫でくりまわして子供扱いされる。
嫌じゃないけどノリが謎だ。

「ちゃぁんと三食おやつ付きで強請れよリアちゃん」

『さっきから何なのそれ』

「リアちゃん？」

『……はい、なんですかその呼び方』

「その方がおまえ嬉しそうにしてるから」

こ、こういうとこ。

『ふぅん……？♡』