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glorious time

第11章 珪線石の足音


車に乗せると大人しくなるが、どうやら急に背を向けられたり離れたりされるのにかなりのトラウマがあるらしいので、今日は試しに先に抱きしめてみることにした。

『なんです、か』

「一旦充電?すぐ隣に戻るからな」

手を取ってチュ、と短く口付けると、ぶわわっと頬を好調させて顔を逸らされた。
数度頭を撫でてからドアを閉め、運転席に戻るとかなり緊張しているようで、シートベルトもまだつけてはいない。

「リアちゃん、シートベルト」

『は、はぃ』

「……付けてやるよ、じっとしてろ」

万が一があったら危ないからな?と撫でればまたもや反対側を向かれてしまう。

車を出して、しばらくして外に出ると落ち着いてきたのだろう。
ようやくあちらから話しかけてきてくれた。

『中也さんは……その、もしかして嫌々私といるわけじゃなかったの?』

「ブッ、」

『こんなにされたらちょっとびっくりするっていうか、なんていうか』

「あのなぁリア、そもそも嫌々人といるなんてこと俺には出来な…………ええとな??そんな奴助けないだろ、俺が」

『中也さんは誰にだってやさしいもん』

「おまえは特別だよコノヤロウ……」

微塵も伝わっていなかったらしい特別扱いに少し泣きそうになったが、まあそれもこれもこいつを取り巻いてきた環境のせいであろう、人間不信は中々治るもんじゃない。

『ちゅうとかされたらその、色々勘違いするから』

「勘違いって、どんな?」

『…………その、……中也さんって、もしかして私のこと結構好きなのかなとか』

「結構どころか思いっきり好きだろ、あんだけスキンシップしてるんだから」

『私のこと実は割とタイプなんじゃないかなとか』

「ストレートにドタイプだよ、この美人」

『なんてそんなわけないのにね、中也さん大人だしこんな身体じゃ見向きもされないのに「帰って俺に可愛がられる予定のお嬢さんの台詞かそれが」……えっと』

「もう一度言うぞリアちゃん?俺は、おまえのこと女として口説いてる最中だ。いいか?」

『えっと、はい』

伝わってなさそうで項垂れたが、まあそりゃそうか。
色恋以前の問題だもんなあおまえは。

「まあいいわ、とりあえず他の女には興味ねぇから安心しなその辺は」

『……じゃあまだひとりじめしてていい?』

「おー、しろしろ。いくらでもしてろ」

『えへへ、♡』
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