第11章 珪線石の足音

太宰の野郎に絆された結果奴の元で寝落ちしてしまったそうで、俺が回収しに行くことに。
ついでに奴に嫌がらせでも、なんて考えでそこに行ったのが良くなかった。

｢……全然変わらないね中也？｣

｢ああ！！？どういう意味だ……とりあえずうちの小娘を返しな、なにいい心地で寝かせてやがる｣

｢いいじゃないか、気持ちよさそうに寝ているのだから。それに私から離すと、多分この子泣いちゃうと思うけど？｣

｢俺がいるから問題ねぇんだよ｣

急かさないでよ、せっかくの再会なんだ。

太宰の言葉に訝しみつつ、再会ねえ？と嫉妬心丸出しの顔をしてしまうが、そんなにも親しい仲だったのだろうか。

｢中也さあ、リアちゃんのボディーガードやらない？｣

｢は？なんだよいきなり｣

｢この子には敵が多くてねぇ、私の力じゃ正直なところ力不足なんだ。せめて私の異能が、何か攻撃手段を持つようなものなら良かったのだけど｣

｢もちろんそいつが無茶するような場面なら俺が阻止するつもりだが｣

｢全然足りないよそれじゃ、四六時中隣でついていてようやくまともに機能すると思ってくれ……君と一緒にいると、敵が寄ってこなくなるようだしね｣

｢ほぉ？つまり手前はお役御免ってわけだ｣

｢……そう言っているのだけどね、あまり言いすぎるとまた自殺しかねないから私も甘やかしてしまうのだよ｣

リアの性分まで把握しているらしい、なんだよ、俺だけしかいないみたいな顔してたくせして。
いるじゃねえか、おまえの本当の理解者が。

｢ただし私に着いてくるのは流石にね……知ってると思うけど、この子君のことを何よりも好いている子だから。君、責任取れる？取れないんなら私がもらうけど｣

｢なんで俺なんだよ｣

｢それを覚えていないのが問題なんだろう？そうじゃなきゃ今頃こんな距離の測り方してないって。とりあえず、この子に気付かれずにボディーガード！頼んだから｣

｢俺がそれを聞くと思うか？｣

｢中也が聞かずとも他にも頼んであるからね、リアちゃんならそれに気付いてくれるだろう｣

それはそれで癪だな。
ガシガシと頭をかいてから、舌打ちし、彼女の身体を奪い取る。

『ぁ……っ、何、おさむさ｢大丈夫だから寝ていなさい｣ん、……うん』

そいつに撫でられて寝息を立てている様子に、負けたのだと思い知らされる。
これが信頼の差なのだろうか。