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glorious time

第11章 珪線石の足音


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夢を見ていたことがある。
いつか、いつか悪い人じゃなくて、ほんとのほんとにただの善良なひとが最初に私を見つけてくれる夢。

その人に求められて、抱きしめられ、大切にされて……それから、こんな地獄から連れ出してもらえたらって。

「い……おい、聞いてるか?」

『へ……?』

「おま……、マジで聞いてなかったろその反応。寝不足じゃ『寝不足は身長伸びない人の方だと思います』てめぇ」

むんず、と頭を掴まれて現実に連れ戻される。
危な、余計なこと考えてた。

「ったく、んで?結局どうやって集めてきたんだよ今回の情報は。報告書上げねぇとだし、そろそろ俺にくらい教えてくれてもいいんじゃねえの?」

優秀な諜報技術をよ、と妙な褒められ方をするのがくすぐったかった。
彼の気にするその手法はというと、まあ簡単な話、分身を作って覚の力を扱うだけでどうとでもなる話なのだ。

変化はもちろん、私の力があればバレることはおろか、ぼろを出す心配もまあ無いことであるし。

ただ、それらをどうこの人に伝えようか……迷う。

『……なんでそんなこと気にするんです?』

「だっておまえ、今回の規模の抗争ですら一人で調べ尽くしてきちまったろ?」

『仕事ですから』

「仕事っつっても危ないだろ、せめて俺にくらい保険かけとけっつってんだよ」

『危ない……?』

まさかの言葉に驚かされて、ポートマフィアの五大幹部様の方を向くと、なんだよ、と何か言いたげな目で返された。

『危ないって、ポートマフィアなのに?』

「だからこそだろ」

『準幹部の仕事なら当たり前じゃ「ああうん、おまえってそういう奴だよな」え?よく意味が……』

「もし相手に捕まりでもしたら、大変だろうが」

私の力量を疑っているとか、信頼していないとか、そういったことではないらしかった。
それは思考を読まずとも、目を見ればわかる。

『そんなヘマ踏みません』

「踏まねぇようにしてんの?」

『…………そもそも、私は直接敵に接触して情報を盗んでるわけじゃないので。……実際に敵地に乗り込んだり、平構成員の相手すら対面するのは乗り込んだ時が初めてなんですよ?』

ぽろ、と持っていたペンを落として、彼が距離を詰めてきた。

「分かるように教えてくれるか?」

『なんていうか……今どき色々便利な機械もありますし』

「おう」
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