第9章 蛍石の道標

｢僕にも教えてくれないけど、それってつまり言えないほどの何かに困ってるんでしょう？｣

『……いつものこと、です』

｢いつものこ…、！？ちょっ、リアちゃん？それ、どっち｣

『い、言わなくてもい｢言いなさい、気持ちを汲めないことはないけれど、ちゃんと言いなさい｣…だ、大丈夫！リア、ちゅ…うや、くんに会えたら、元気になるから』

どういう、ことなんだ。

俺のことをそんな風に呼ぶような奴だったか？
それに加えて元気になるって、お前…

『嫌われなかったら、大丈夫なの…っ、だ、から…あの、……お仕事、ちゃんとする、から一緒に居させて下さ…ｯ』

涙声になってまで懇願する様子に、胸が潰されそうにさえなる。

待て、俺の直属の部下になったのは首領の命令だったんだろう？
お前、首領に言われたからわざわざついてやってるんだとか言わんばかりの勢いだったじゃないか。

なんでお前が頼み込んでる。
なんで…俺なんかと。

｢それはいいけど、その中也くんが君のこと心配してるんだよ？｣

『！！？』

心配…してる素振りを首領の目の前で見せたつもりは無いのだが、それにしても白縹の驚きように違和感を感じる。

｢突然居なくなって仕事抜けてるのに、ちゃっかり業務は終わらせてるし、なのに何も言わずに消えちゃったらそりゃ…心配にならない？｣

『…や、それは…有り得ないと、思いますけど』

こいつ、やっぱり俺の事嫌いなんじゃねえか？
人でなしだと思われて…

『心配、とか…その…リアになんか、する人…』

｢僕でも心配しちゃうのに？｣

『…分かんない、ですそういうの……ほ、ほら、幽霊だから』

また、それ。
幽霊だとかゾンビだとか、そんな風に自称してばかり。

｢中也くんならそんなわけあるかって否定しそうだけどなぁそれ｣

『そ、…ぅ、かなぁ…』

どこか、目線を下げて、柔らかい声色になってもじもじし始めるそいつにまた、驚かされる。

｢というか、どの道今日こそちゃんと中也くんに会ってから帰りなね？書類の提出も、僕じゃなくてちゃんと中也くんにしなさい｣

『えっ、でもリア嫌われて…』

｢ちゃんと渡せるようになった方が、中也くんリアちゃんのこと好きになると思うよ？｣

いや、首領、そんなことを言って一体何になるって＿＿

『…ほん、と？』

｢うん、本当｣

『……行く、』

何だよ、それ