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赤髪と拳銃女子

第1章 思い出す


シャンクスの初恋は叶うことはなかった。
見習いとしてオーロジャクソン号に乗っていた頃のことだ。同じ船で共に戦う十以上歳の離れた女に心奪われた。
彼女は火器の扱いに優れており、弱かったシャンクスは幾度となく彼女が放つ銃弾や爆弾に助けられたものだ。

「おれも銃覚えようかな。教えてよ」

拳銃の手入れをしている彼女に頼んでみたことがある。彼女に憧れていたから。近づきたい一心で出た言葉だったが、彼女は首を横に振った。

「私が銃を扱うのは、力や速さがないからよ。集中力でどうにかなるから、これを使っているの。本当は船長やレイリーみたく、体でぶつかるような戦い方をしたいのだけど」

彼女は消去法で今の得物に落ち着いたのだと言った。
自分は女だからと卑下しているようにも聞こえて、少年だったシャンクスは少し悲しくなった。
当時のシャンクスはその自分を卑下している女に勝つことができないほど弱く、何も言えず口を噤んだ。

「シャンクスは、接近戦の方が向いていると思うわ。剣のお稽古しているでしょ?それを極めたらいいわ。とても強くなる気がする」

好きな相手にそう言われたから、シャンクスは剣を握り続けた。
いつかかっこいいと言ってほしい。そんな青臭い理由だったけれど、彼女の言う通り剣の腕はめきめきと上達した。

「すごいわねシャンクス。私を負かす日もすぐ来ちゃいそう」

そう微笑んだ彼女は、シャンクスが彼女を超える前に船を下りた。
停泊中の島で恋に落ちた男との子を授かったと、幸せそうな顔をして。

「あまりこういう話はしたくないがな。仲間として、あいつの幸せは素直にうれしい。心からおめでとうと言える。心から幸せを願って送り出せる。嘘じゃない。しかし、あいつはうちの大事な戦力だった。こういうことがあるから、女はあまり、乗せるものじゃないな」

彼女が船を下りた日の晩、一人静かに酒を飲み涙を流していたシャンクスの背中に、レイリーはそう声を掛けた。


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