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【金カム】隣の山猫【尾形】

第1章 プロローグ


尾形とは、幼なじみだった。

家が隣同士で、お互い母子家庭だったため、母親同士の仲もよく、自然と遊ぶようになった。

小中高大と全部同じ。
所謂腐れ縁って奴なわけで。

そして大学進学と同時に、二人共上京した。大学でデザインを学んでいた尾形は、Webデザインなどを手がけるデザイナーになった。一方の私は昔から興味のあったアパレルブランドの商品開発部に勤める会社員になった。

片親のため、そこまでの経済的な支援を受けることができない私達は、自然と大学卒業間近にルームシェアを考えていた。
基本在宅の尾形が私の職場から近いマンションでいいと言うので、お言葉に甘えて職場から徒歩10分のマンションの2LDKに住まうことにした。

当時周りの友人からは、大学でも顔がいいと評判だった尾形と二人暮らしをすることに対して騒ぎ立てたが、特に尾形を男として見てもいない私はそれを気にすることもなかった。尾形もきっと、同じだろう。

正直、1人で暮らしていたら、私は嫌になって地元に帰っていたかもしれない。
1年目は仕事が忙してくて、本気で辞めたいと思っていた。でも帰宅すれば、尾形が得意の料理を作って待っていてくれる。酒を飲みながら尾形が愚痴を聞いてくれる。家事全般は在宅の尾形がこなしてくれる。
本当に、尾形ありきでこの仕事を続けてこられたと思っている。

尾形の仕事の方は順調らしく、年収は同年のサラリーマンの3倍近くまでになっていた。彼の独特なセンスと、巧みな言葉遣い、そして顔が受け、多くの仕事が舞い込んできたらしい。

私の方は…まぁ、普通。別に生活に困る訳でもない。家賃、光熱費はきっちり半分ずつ、生活費に関してもいくらずつ出すと決めていたし、それ以外の自分の給料は好きに使う。これが滞ったことも、変に気を使いあったこともない。昔からずっと一緒にいるわけだし。

生活を共にしてきて、嫌になったことは無い。
お互い映画好き、酒好き、愛煙家。二人の休日が合ったとなれば、リビングのソファに座り、二人で酒と煙草を楽しみながら時間を忘れて一日中映画を見る。そんな生活が心地いいとさえ感じていた。

そして今、ルームシェアを始めて4年。
私達は実に26歳となっていた。

そう。26歳。

お互い独身。

ルームシェアを始めて4年、ようやく最近気付いた事がある。


——恋人が、できない。
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