第49章 肥前、捻じれた世界へ行く 2 〔肥前忠広〕
「…以前見た場所だな…」
目の前の建物を見て肥前忠広はまゆをひそめる。
本丸や遠征していた場所とは全く違う造りの建物に、以前も来た事があると肥前は気付く。
「おや、また貴方ですか」
上から声が聞こえてきたのも以前と同じだ。
肥前は上を見上げ、仮面を着けた黒づくめのおとこを見る。
「またここに来てしまったのか…」
ちっと小さく舌打ちした肥前は、黒づくめのおとこが上からひらりと飛び降りるのを眺め、彼が口を開くのを待った。
「肥前くん、でしたね。この世界に貴方がいらした、ということは得体の知れない者たちが、またこの世界に来てしまう可能性があるのでしょうか」
面倒ごとはごめんだ、と言わんばかりの黒づくめのおとこは、肥前に嫌味のような言葉を投げ掛ける。
「学園長だったな…俺も好きでここへ来てしまった訳ではない。しかし時間遡行軍が来たなら、俺はこの学園と生徒を守るために戦う」
得体の知れない学園長、ディア・クロウリーの言葉に自分の本分を肥前は伝える。
「ま、そういうことでしたら、またこちらに留学生として通うのも良いでしょう。異世界からのかたでも歓迎しますよ、私、優しいので」
以前同様に留学生になるようさっさと決められ、肥前は元の世界に帰るまで、またこの捻じれた世界に滞在する事になってしまった。