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刀剣純情伝 《刀剣乱舞/短編集/R18》

第4章 片恋をいつか 〔薬研藤四郎〕


ぽんぽんと俺の頭を軽く撫でる大将に、俺は自分が短刀である事に少々がっかりした。

それまではこの姿に文句は全くなかった。

小さいから機動力があって小回りがきいて、何より太刀では動けない夜戦向き。

短刀である俺たちの誇りはそれなんだ。

でも、大将への気持ちに気付いた今、この姿ではいつまでたってもこども扱いをされるだけだと知る。

俺もいち兄みたいな大きい刀になりたかったな。

そうしたら大将は俺を見てくれたかな。

いや、きっと大将は俺が大きくても俺ではなく、いち兄を見つめているだろう。

だったら?簡単だ。

俺は今の姿でも大将が惚れてくれるような活躍をしてみせよう。

そしていち兄から大将を奪って、俺の望む大将との関係とやらを結ぶんだ。

他の短刀たちと楽しそうに語る大将の横顔を見つめ、俺は決意する。

大将、覚悟しとけよ。

俺が本気になったら、誰よりも活躍して、大将のその顔を俺にむけさせてみせるから。

俺はふっ、と一人で笑うと、弟たちの中へ入り、一緒に菓子の袋を開ける。

ぱりん、とせんべいを半分に割って、その割った半分を大将の口元へ押し込む。

「ほら、大将、口開けろ」

恥ずかしがる大将の口に割ったせんべいを押し込んで食べさせる。

そのせんべい、大将の口に運ぶ前に、俺が軽く口付けしておいた。

つまりは俺に惚れる、媚薬付きせんべいさ。


<終>
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