• テキストサイズ

刀剣純情伝 《刀剣乱舞/短編集/R18》

第2章 愛が香る 〔歌仙兼定/R18〕


「主、伽羅(きゃら)だよ、どうぞ」

ぼくは香炉を回すと、おぼつかない手つきで香炉を取り上げた主が、教えた作法通りに焚いた伽羅を聞く。

「…わぁ…」

小さく主が声をあげたのに気付くが、今はおしゃべりする時じゃあない。

ぼくが無言で主を見ると、はっと気付いた主がちょっと肩をすくめて、後は静かに香を聞いて次に待つ燭台切光忠へ回した。

「刀の主が香道やっていてね」

光忠が軽く言って香炉をくるりと回しながら持ち上げる。

そうだ、刀の時の主はあの伊達政宗なんだっけ。

「だから慣れてるのか」

ぼくが言うと、光忠は軽く頷きながら香を聞いた。

「伽羅って良い香りね」

戻ってきた香炉を扱うぼくの手を見ながら、主が言う。

「ああ、一番だね。主は蘭奢待(らんじゃたい)って聞いた事、有る?」

「らんじゃたい?」

「奈良の正倉院のおたからの香木だよ」

「正倉院…ええと聖武天皇の時代のものだっけ?」
/ 790ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp