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白夜に飛ぶ鳥【ONE PIECE】

第7章 吸血ネズミ


 興奮冷めやらぬ下半身を持て余し、怒りに任せてローは能力で自身の血流を操作した。ついでに自分の脳にまで手を入れて、ホルモン分泌を司る下垂体の機能を抑制する。二度とたわけた夢など見ないように。
 昨日はをベッドまで運び、すぐ自室に戻って寝た。何もなかった。必要以上に彼女に触れた事実なんてどこにもない。

「次は……? 鼠咬症の対応と傷口の消毒か」

 ネズミを八つ裂きにしても足りない怒りで冷静にものを考えられず、ローは口に出してひとつひとつ対応にあたった。
 清潔な水で傷口を洗い、消毒液で傷口を消毒する。抗生物質を飲んで必要な手当を終えると、ローは船中スキャンして5匹のネズミを瓶詰めにした。恐ろしいことに、すでに一匹は妊娠していた。

 船にいるネズミすべてを捕まえた確信が持てると、に見つかって「飼っていい?」なんて聞かれる前に、ローは瓶詰めにしたネズミを渾身の力で海に投げ捨てた。
 動物をいたぶる趣味はないのだが、解剖する気も起きなかった。ぜひ苦しんで死んでほしいという気持ちしか湧いてこない。

(余計なこと気づかせやがって……!!)

 噛まれたことで性欲を増進させられた故の夢だと、誤魔化すことができなかった。
 が可愛くて仕方ない。大事にして、優しくしたい。命を救われた恩を、一生をかけて返したい。彼女のそばで――。
 そんな気持ち、永遠に気づかない振りをするはずだったのに。

「忘れろ……っ!!」

 甲板の手すりを握りしめて、ローは自分に言い聞かせた。
 あの雪の日に、どんな手を使っても、何年かかっても、必ず彼の代わりに引き金を引く――ドフラミンゴを殺すと誓ったのだ。
 よそ見をしている余裕なんてなく、まして誰かを愛しなんてしたら、また失う恐怖に縛られて動けなくなる。

(海賊がを幸せにできるとでも思ってんのか、トラファルガー・ロー!! いつかが堅気の男に惚れたら送り出すのがお前の役目だろうが……っ)

 死ぬ時にの心配なんてしたくないのだ。
 彼女は幸せで、自分が死んでもそれは何一つ変わらずにいると、そういう状況を作るのが自分の仕事だとローは自分に言い聞かせた。――彼女を愛してなんかいないと。

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