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理由【ヒロアカ】

第6章 理由その6



マイトさんがオールマイトだった。
そう知った時、私の頭の中に浮かんだものは自分への罵倒でしか無かった。

…馬鹿だ。私は大馬鹿だ!
何がオールマイトのフォロワーだ。何が生まれた時からずっと大好きだった、だ。
本当のマイトさんにも、オールマイトの真実にも、何も気付かなかったなんて。
ヒントはたくさんあった筈。マイトさんの方が痩せてるとはいえ同じ身長、体型差ゆえ張り艶があるなしの違いだけの声、オールマイトと違い下ろしているが同じ色のマイトさんの髪の毛、どちらの姿でも強い眼差しをしていた蒼い眼だって。
共通するものなんてこんなにたくさんあったのに。
私は全く気付かなかった。大馬鹿の大間抜けだ!

「オールマイト…」
彼に向かってその名を呼べる幸せのために私はヴィランになった筈なのに。
「今からでも遅くない。自首しよう、」
マイトさんと違い、張りのある声でオールマイトが私に向かってそう言う。同一人物と気付いてしまったら、声色がやっぱり同じで泣きたくなった。
「…」
私の罪を知りながらも、それでもまだ私の名を呼んでくれるオールマイトに幸福を感じる私はやはり罪深いんだろう。

「なんだ…別にヴィランにならなくてもオールマイトに会えたんじゃん。馬鹿だね、私って」
「?」
「本当に、馬鹿だ」
馬鹿な私はもう認めた。もうこれ以上情けない事はないんだろう。
目端に浮かんだ涙を振り払った。ヒーローの前で泣くなんてヴィランらしくないからもう止めよう、だって最高のヒーロー・オールマイトの前なんだから。

「…やっと言えるね。私がヴィランになった理由」
デートだと思って履いて来たヒールの高い靴が今は邪魔だと思った。しかもこれはマイトさんに初めて会った時履いていた靴。
一度は似合わないと言われてしまったけど、これが似合うくらいになったと思って今日は履いて来たのだが、それをもう伝える事は無いだろう。


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