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理由【ヒロアカ】

第4章 理由その4




「マイトさん、お久しぶり」
「ああ。ご無沙汰だね」
「あれ、マイトさんスーツなんて着てどうしたの?」
「うん。実はこの歳で転職してね」
「へー。じゃあ転職祝いと言いたいけど、今日は自棄酒なの。付き合って」
「はいはい」
居酒屋のテーブルに突っ伏しながら、私はマイトさんに向かってひらひらと手を振る。それを見下ろしてマイトさんは苦笑いしながら椅子を引いて腰掛けた。


遊園地でマイトさんに再会してから、私達は何回か会って呑む、飲み仲間になった。
私はお酒が好きだし、あまり飲まないけどお酒の席が好きなマイトさんとは毎回話が弾み、会うのが楽しかった。
ただし今回は違う。先に入っていたお店で私は既にへべれけだった。



「どうしたんだい。荒れてるね」
スーツの上着を脱ぎながらマイトさんは店員に注文をし、私に向き直る。
「荒れもするわよおお…」
突っ伏したまま拳をダンとテーブルに叩きつけた。こらこら! とマイトさんが慌てて止める。
「テーブルを壊す気かい?」
「…ごめんなさい」
素直に謝るが額はテーブルにくっつけたままだ。

店員が運んで来たビールを手に持ち、マイトさんが置きっ放しだった私のグラスにちんと音を立てて当てた。
こくこくと喉を鳴らすマイトさんをぼんやり眺めてから、私はようやく起き上がった。
「…ねえマイトさんはオールマイトが事務所休業ってニュース見た?」
「ああ。知ってるよ」

先日、日本中が驚くニュースがネットやテレビを席巻した。
平和の象徴オールマイト、彼が雄英高校の教師になるというのだ。

――雄英高校。
全国最難関のヒーロー科を併設するこの高校はたくさんのヒーローを排出してきた。ヒーローを夢見る少年少女の憧れの学び舎。それが雄英だ。
私の愛しいオールマイトもこの雄英出身らしい。というか雄英出身としか分からない。
だから私も受験だけはした事がある。オールマイトの出身校に通えるならいいなあって。実際は不合格だったのだけれど。

私は大きく溜息を吐いた。
「雄英の教師になるから事務所休業だって。・・・って事はヒーローも休むって事?」
「それはどうだろう」
マイトさんがちびちびとビールを舐めている。炭酸の抜けかけたビールだけど量が飲めないマイトさんはこれで充分らしい。

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