第3章 婚約と同棲

仕事に集中して取り組んでいたら、あっという間に部屋の引き渡し日になった。


｢ありがとうございました｣


引き渡しを済ませて、業者の方に家具を運び入れて貰った。


全ての作業を終えたのはお昼前。


｢穂乃香さん、ご飯食べに行こうよ｣


休みが一緒だったらしい晴人くんが、引き渡しを手伝うと申し出てくれた。


｢ね、穂乃香さん。

提案があるんだけど｣


近くのハンバーガー屋さんで、ポテトとハンバーガーを頬張りながら言う。


｢俺も一緒に住みたい｣


｢え？どこに？｣


｢穂乃香さんの部屋。

同棲したい｣


｢私は良いけど...一人暮らし用に借りた部屋だから狭いよ。

それに晴人くんが借りてる部屋だってあるし...。

ほら、契約とか｣


｢俺の部屋今月が更新月で、まだ更新してないの。

だから穂乃香さんさえ良ければ一緒に住もう｣


｢分かったわ｣


承諾すると、晴人くんは歯を見せて笑った。


｢次の休みには越して来れると思うから、そのつもりでね｣


お腹も満たされ、部屋の片付けに戻ろうとすると手を引かれた。


｢あと1箇所、行きたいところあるんだ。

付き合って｣


手を繋がれ、1つのお店の前で立ち止まった。


そこは...。


｢婚約指輪、買いたくて｣


照れくさそうに頬を掻く晴人くんにキュンと来る。


｢お揃いが良いよね、どうせなら。

うーん、穂乃香さんは優しい色って感じがするよね。

緑とかピンクとか｣


晴人くんが見ているのは小さな宝石が埋め込まれた指輪。


｢どうしよ...｣


お財布の中身も確認しながら宝石を見つめる。


高価じゃなくて良いのに。