第6章 ノブレス・オブリージュ
「姫様!」
「姫ねーちゃん!」
そう呼ばれるたびに胸が痛んだ。
ごめんね。
私なんかが姫で、本当にごめんね。
もっとみんなが楽しく暮らせるようにしたかったんだけど、
私にはそんな力はなかったみたいなの。
…だから、ごめんね。
私だけ普通に生きたなんて、酷いよね。
恨んで、いいよ。
―6.ノブレス・オブリージュ―
「…酷い有様ですね」
「…………………」プイッ
ベッドに横になる椿を見て、不機嫌そうにため息をつく鬼灯。
額・腕・足・胴体とほぼ全てに包帯をぐるぐると巻きつけられた椿。
彼女は眉間にぎゅっと皺を寄せたまま、鬼灯が腰掛けた椅子とは反対の方向に顔を向けた。
「……」イラッ
金棒を取り出し椿の頬にぐりぐりと押し当てた。
「仕事に失敗したらなんていうんでしたっけ?ほら、ほら。そんなこともわからないんですか?」グリグリ
「…し、失敗してないです!!助けを求められたら助けようとするのは人として当然じゃないですか!!」
「何度も言わせないでください。ここは地獄です。相手は罪人です。罰を与えるのがあなたの仕事です」
「私だって罪人です!!」
「あなたはもう人じゃないって何回言えば分かるんですか!!」
口論の間もぐりぐりと椿の頬にめり込む金棒。
慌てたお香が仲裁に入る。
「まぁまぁ鬼灯様。相手は怪我人なのでそろそろ…ほら、怪我が長引くとお仕事にも支障がでますし」
「……まぁ、そうですね」