第6章 小夜左文字
横たわる審神者の傍らに、小さな存在が静かに鎮座していた。
静かな空間には審神者の苦し気な呼吸と、小夜が自らの服の裾をギリッと握る衣擦れの音だけ。
主「ぅ……くっ…」
不意に寝返りをうち苦しむ審神者、小夜は掛け布団を僅かに剥いで彼女の背を小さな手で一生懸命に擦る。
小夜「主…大丈夫?」
意識が無い為に返事はしなくなってしまったが、小夜はそれでも構わなかった。
今まで自分を愛し甘やかした優しい審神者…大好きな主に何かしてあげたかった。
言葉数が少ない分、小夜は彼女の世話をした。
良くなって欲しい、苦しまないで欲しい、痛みを取り除いてあげたい…また、抱き締めて欲しい。
彼女と居る時だけは復讐の事を忘れられる…彼女は小夜にとって、それだけ大きな存在だった。
小夜「主、もう朝だよ…寝坊だよ?」
彼女の背中を擦りながら、静かに声を掛ける。
不意に彼女がうっすらと目を開けた。
病でカサカサになってしまった唇が、微かに動く。
主「さ…よ…ちゃ……」