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こんなはずじゃなかったのに

第1章 1


「ゃ……川島……」

お嬢様の恥じらうような可愛い声を聞きながら、少しずつ下も脱がせる。

パジャマの下にはオレが選んだ下着が、まだお嬢様の肌に張りついている。

それは脱がさないまま、お嬢様の肌を引きつづき愛でまくる――。

そんな光景を頭に思い描きながら、ひとりニヤけていると遠くから声が聞こえてきた。

「川島ー!バスローブがないー!!」

いけない。

お嬢様のパジャマ姿を想像していて、すっかり用意を忘れていた。

こんなことでは、お嬢様にクビを言い渡されてしまう。
……絶対に嫌だ。

あわてて清潔なバスローブを届ける。

お嬢様は受け取ったバスローブをさっと優雅に羽織ると、今日は疲れたからもう寝るといって自室へ行ってしまった。

そのまま立ち尽くしていると、お嬢様が戻ってきた。

「おやすみ、川島」

いうとオレの肩に手をかけ、頬に軽いキスをした。

それだけをいうために、わざわざ戻ってきてくれたお嬢様。愛おしい。狂おしい。

同時にオレは宇宙一しあわせな男なんじゃないかと思える。頬に触れた柔らかな唇と、ふわりと香った花の匂い。

衝動的にお嬢様を強く抱きしめたくなった。

だが、お嬢様はオレの腕が動く前に、さっと身をひるがえし自室へと帰ってしまった。

「おやすみなさいませ、お嬢様……」

キスされた頬に手のひらを当てながら、ひとりごちるように返した。


さっきからずっと、お嬢様とおそろいのパジャマで一緒にベッドに入る光景が、頭から離れようとしない。

オレは強行作戦にでることにした。

まずは、おそろいのパジャマを用意する。
下着も用意する。

それをいつ、どこで、どう渡すのか……。

ワインを飲みながら、自室でゆっくりと作戦を練ることにした。

     *

作戦実行の日。

お嬢様は、帰宅後すぐにパウダールームへ入った。
手を洗うためだ。

そこでバスルームからいい香りが漂ってくる。

湯を張ったバスタブに、オレがあらかじめエッセンシャルオイルを垂らしておいたからだ。

バスキャンドルに火をともし、花びらも浮かべてある。

好奇心旺盛でキレイ好きなお嬢様のことだ。必ずバスルームをのぞき込み、入りたくなるに違いない。


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