【テニスの王子様】冷たく蒼らむ日々のなかで‐番外編
第1章 I fell in love with you
いつもいつも思う、どれだけの物を捨てればあたしはあたしのままでいられるんだろう。
例えば自由。
例えば痛み。
例えば友人。
例えば学校。
例えば苦しみ。
例えば時間。
そして恋。
それらを一つづつ捨て去ることで今のあたしは生きている。
まるで魚の鱗を剥ぐように、あたしの身体からいくつも剥がれ落ちていく物たち。
だけど、それらは、本当なら誰もが当たり前に持っているはずのもだというのに。
あたしと同じ年頃の女の子なら、誰もが普通に、なんの努力さえ必要なく、当たり前に両手に携えているというのに。
あたしは、それらを手放さなければ生きていけないのだ。
まるで今にも沈没しそうな船が、次々と積み荷を暗い海の中へ落とすように。
あたしは、そうやってでしか生きられなかった。
そして、その不運にどれだけ泣いたことだろう。