第6章 〜闇夜の邂逅に白き魔術師、驚き好きの鶴も添えて〜 前編
「……倶利伽羅」
「(倶利伽羅?それは彼の渾名なのか…?)」
僅かだが一瞬、目を細めたら麻衣がポツリと渾名を呟く。伊達広光を呼んだネーミングに、安室が胸中で訝しんだ。渾名の由来が見出せないでいる。その為、麻衣と護衛二人が視線を交わした意味深なやり取りに気づかなかった
「わざわざ届けて下さったのですね。ありがとうございます」
「礼はいらない」
「一体誰からの届け物だ?」
「さあ?なまえがかいてありません…」
大倶利伽羅から荷物を受け取り、固まって会話を進めた四人。届け物は包みがシンプルな平たい円柱の箱のようで、今剣が両手に持って全面をくまなく観察した。貼り付け票も付いておらず、直接ポストに入れられたようだ
「でもこのおくりぬしは、あるじさまに、うけとってもらうきがあるんでしょうか。ななしだなんてねついがありません。まったく、これだからさいきんのやからは…」
「キミも (見た目は) 最近の輩だと思うぞ?」
「違う。そこは微妙に外れだろう。根本的な部分に突っ込め。そして、さっさと中身を確認しろ」
ビシリッ。大倶利伽羅の呆れた視線や厳しいツッコミが炸裂する。「はーい、ちゃんとわかってますよ!」愛らしい笑顔で今剣が言った。届け物の包み紙は小さな彼の手が乱雑に破り捨てる。現れたのは茶色い木箱で、一見何の変哲もなかった。しかし、離れて様子を見ていた中森警部が、箱を開けようとする今剣にすぐ様待ったをかけたのである
「待ってくれ、まずは我々が確認しよう。キッドからの可能性がある」
そう言って、麻衣達が囲う木箱に疑惑の眼差しを向ける中森警部。麻衣達は素直にそれに従い、今剣から木箱が手渡った。「お願いします」麻衣の言葉に中森警部が頷いた時だ
【Ladys & Gentlemans!今宵も素敵なshowの時間です!!】
突如、ブシュッと木箱の中から蓋を吹っ飛ばして白煙が噴射。拍子で木箱は床に落ちるが、怪盗キッドお決まりの台詞が木箱の中の録音機で響く。「なにぃ…?!!」「キッドか…!!」誰かが叫んでも、視界が白煙で遮られて分からない。現場はあっという間にパニックに陥った。麻衣や刀剣男子達を除いて───。