第5章 愛情
私達は夕日が綺麗に見える防砂ダムまで飛んできた。
目線の先には、クオードが夕日に黄昏れ、ウルタ皇女は彼の後ろにいた。
「第十一代ウルベア皇帝ジャ・クバの娘皇女ウルタが問う。皇帝を暗殺したのは宰相グルヤンラシュ。そちにまちがいないか?」
「……そうだ。」
私はクオードの方へと歩き出した。
彼の横顔が、夕日と相まってすごく綺麗に見えた。
ウルタ皇女の問掛けは続く。
「皇帝暗殺の罪をビャン・ダオになすりつけ、帝国の実権を握り、意に沿わぬ技術者や廷臣を戦地へ送り込んで密かに謀殺したか?」
「そうだ。」
私はクオードの隣まで来ていた。
「過ぎた時を戻すとわらわをそそのかして時間跳躍制御装置の開発をおこない実際は自分だけが時をわたろうとした。これも間違いないのじゃな?」
「ああ。」
クオードは落ち着いていた。
私はその姿が心配にもなった。
「エテーネ王国を滅びの歴史から救う。たとえどれだけの罪を重ねようとも俺はやらねばならなかった。」
"……それだけだ"
何でこうなってしまったのか。
きっと、クオードも同じこと考えてるはずだよね。
「在りし日のぬくもりを取り戻すため時を渡り歴史を変えるという夢。同じ夢を見てそちと過ごした日々は本当にかけがえのないものだった。」
かちゃり、と嫌な音がする。
ウルタ皇女を見れば、銃をその手に持っていた。
「まって、ウルタこうっ…。」
「だがわらわは皇女として……次の皇帝として…奸臣グルヤンラシュを断罪する。」
「まってウルタ皇女!!!」
私は気づいたら走り出していた。
ウルタ皇女に向かって叫んでいた。
なぜここで急に迷いが出てしまうのだろう。
彼はたくさんの罪を犯した。
「もういいんだ……テレサ。撃て。」
「待って…クオード……。まだ私貴方に話したいことが……。」
ウルタ皇女も撃っていいのか分からない状況になってしまった。
私の嘆き、そして彼女自身の揺らぎ。
私は涙を流しながら叫ぶ。
ウルタ皇女は怯えている。
「撃てっ!!!」
そんな状況に耐えられなくなったのか、クオードは大きな声をあげる。
びっくりしたウルタ皇女が思わずクオードの心臓を撃ち抜く。