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遠い想い【蒼竜の側用人】

第2章 悲しい再会


 毎年、約束通り、風音はやって来た。キリトとジェドは一度、舞を見に来たきり、風音に会いには来なかった。ハイネダルクには意味が分からなかったが、二人いわく「ハイネに気を遣ってやってるんだ」とのことだった。

 風音は欠かさず森の奥にやって来て、エルドランテと仲良しになった。
 風音の舞をハイネとエルドランテが楽しく見守ったり、二人と一匹で楽しく語り合ったり、共に過ごすのがただ楽しかった。
 ところが、風音の歌が上達し、町の広場でも、父親の演奏に合わせて歌いながら舞うようになった翌年、ミダは戦火で消滅した。
 逃げるようにミダを追われ、レギオン(竜の顎)に居を定めた時、ミダの滅亡が収穫祭の時期でなくて良かったと、密かにハイネダルクは思ったが、同時に、もう二度と風音とは会えないだろうとも思っていた。

 それは、郷愁に駆られてのことだった。ミダの焼失から数週間後、ミダの森があった場所へ、ハイネダルクが黒竜の姿で降り立った時、予想外の人物がいた。
 焼かれて枯れた草木を、必死に瓶に詰めて集める、最後に会った面影よりも、少し大人びた少女、それは風音だった。
「竜!?」
 驚いて振り向く風音の前で、人の姿に戻ると、風音はますます青ざめた。
「ハイネ! 無事だったのね! でも、なぜ、竜の姿に!? それもそんな黒い……。エルは? エルはどこなの!?」
「エルドランテは俺の中にいる」
 重い言葉に風音はハッとしたように呟いた。
「繋呪(ケイジュ)……昔、お母さんが教えてくれた……」
「これから、この土地は寒くなる。風音、二度とここに足を踏み入れるな。ここにはもう何もない」
 風音の瞳に涙が盛り上がった。初めて彼女が見せた深い悲しみの色だった。
「そうよ。お母さんのお墓も、舞を舞った広場も、あなたとエルと過ごした森も、みんななくなった。せめて……せめて草木だけでも残したくて」
「草木を集めるのは俺が引き継ぐ。お前は立ち去れ」
 ハイネはわざと冷たく吐き捨てた。
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