第1章 序幕
「超常」が「日常」となり、「架空」が「現実」になったこの世界のように
平々凡々な俺にも劇的な変化が訪れてすごい"個性"に目覚めちゃったりなんかして、物語の主人公のような痛快な日々を送れるんじゃないかと夢を見ていたこともあった。
けれども現実はあくまで現実。
そんな英雄譚がゴロゴロと転がっているようならば、"敵(ヴィラン)"などという犯罪集団なんてありはしないだろう。
俺はその他に埋没する凡人でしかなかった。
だけれどそんな俺でも確かに"誰かを"救えた。
平凡な顔、能力、家庭。
平凡な毎日とありきたりな言葉で。
俺が誰かを救う時、
そこに劇的な物語や言葉や能力なんて存在しないけれど
それでも俺が真剣にその"誰かの"為を考えてした言動は、
確かに"誰かを"救っていたんだ。
平凡な俺と、少しの変わった友人と、危機的状況で。
これは平凡な俺が誰かのヒーローになる話。