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【BRM】太陽と鼠【裏】

第8章 白




冬休み明けの町は、まだどこか微睡みのような雰囲気と、忙しない中にも賑やかさがあって、不思議と嫌いになれない。
午前だけだったので、駅前のファーストフードのお店でご飯を食べて帰ることにした。
お店に入ると、富士田くんがいた。
要さんにも、なるべく一人で行動しない方がいいと注意されていたので、カウンターの隣に座った。
正直、交友関係はあまり広くないので助かる。
「ちゃんはあそこの頭いい高校だよね、凄いなあ」
「そうでもないよ、倍率もそんなだし、ちょっと勉強すれば入れちゃうよ」
「えー!?」
富士田くんが驚いていると、隣に違う学校の女子グループが座った。
派手そうな子たちで、大きな声で喋っている。
「うちの彼氏5回だよ5回!」
「うっわ、なにそれしんど…」
「速いか遅いかにもよらない?」
「速いけど、なんかホテルいてもヤってるだけでつまんないんだよねー。
別れようかな……」
「アヤコの彼氏もさ……」

「……」
なんの話か察してしまって、顔が熱くなる。
(5回……)
そんなに愛されたことはあっただろうか。
そもそも、そういう関係なんだろうか。
好きって結局言ってもらったわけじゃないし、同情の範疇からまるで抜けていない。
「仙石さんは…」
「そんなにしてないよ!!!?」
「……?なにが?」
「……!!!」
富士田くんの会話の出だしに吃驚しすぎて、完全に墓穴を掘ってしまった。
やってしまった、と思いながら慌てて誤魔化そうとしたけど、向こうもそこまで気にしていないようだ。
「一緒に暮らすの大変そうだなって。
たまに強引だし」
「……そう、だね…。
でも、すごく、優しい」
富士田くんは、安心したように笑った気がした。
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