第7章 近づく距離
彼女がいたって結婚すら意識しなかったっつーのに、彼女でもねぇ黒須とは結婚したいなんてホントどっかおかしくなったんじゃねぇかって思うけど、黒須に惚れてから初めて結婚してみてぇって漠然と感じた。
すげぇ好きで、一緒にいる方が落ち着く女なんて黒須だけだった。
ネロがうちに来た経緯を人に細かく話すことは今までなかったけど、黒須はこの間会った時俺を借りたって言ってネロにおやつを買ってくれて、元カノみてぇな勝手なタイプとは正反対だった。
それに、犬も好きらしいから会わせてぇとは思うけど、すぐって訳にはいかねぇ
俺は黒須も大事だけどネロもすげぇ大事。
一度人間の都合で傷つけちまってる以上、次は失敗できねぇから会わせるのは慎重にいくべきで簡単にはいかねぇ。
黒須は感受性が豊かなのかなんなのか、一人で考え事をしては表情をコロコロ変える。
悲しそうにネロの話を聞いて、ネロが今は幸せだって嬉しそうに笑ってる。
その後もすげぇ色んな表情をして、ニコニコしてちょっと顔を赤くしたり眉を下げたり。
仕事の時はポーカーフェイスで、感情なんて最後にBOSSにハグした時しか見せなかったけど、プライベートではすげぇ表情豊かで、ついつい見ちまって、何考えてんのかなんて全く分かんねぇけど可愛くて目が離せなくなる。
「なぁ。俺すげぇ腹減ったんだけど」
「あ、だよね。寝続けててごめんね」
「とりあえず乾杯するか?」
「うん!」
クリクリとデカい目を動かして笑ってメニューを見る横顔がすげぇ美人。
化粧をしてねぇのに長いまつげがメニューの文字をなぞるように上下して、ぷっくりした唇からシャンパンの名前がこぼれる。
「クリュッグ・グランド・キュヴェ・ブリュット…これは辛いなー…うーん……あ!青峰君の好きなのある?」
「黒須が寝てる時に見たけど特に好きってのはねぇから、黒須好きなのにしろ」
「じゃあドゥミ・セックがいい。青峰くん甘めでも飲める?」
「ルイ・ロデレールのロゼかモエのアイスなら甘めも飲める」
「じゃあモエがいい。アイスのロゼでもいい?」
「あぁ」
黒須は高いものが好きって訳じゃねぇらしい。
ちゃんと好みがあって値段よりも好きな物を選ぶって感じだった。