第7章 近づく距離
「あたし外れた方がいい?」
あたしがメイクをするのが現場的にNGなら外れるしかない。
さすがに呼ばれた後にそんなことを言われたことは一度もないけど…
「いや、俺はオファーを受ける代わりにメイクはこっちで出すって条件でこの仕事を受けてるからエージェントが交渉してる。メイクを今から変更すんなら俺はやらねぇって言ってきた」
「てか、なんでそんな話になったの」
こっちでメイクを出すってことは最初から言ってあるってエージェントから聞いてるし、そもそもメイクをどうするかはアクターが決めるのが普通。
現場で用意してもらうなら制作側が選ぶし、アクターが希望すればその人を使う。
「ジェシカだよ。自分の作品に腕を信用できない奴は使えねぇとか言い出した」
嫌そうに理由を話してくれたのを聞いて納得
ジェシカがあたしを気に入らないっていうのは最初に挨拶をしてイメージを聞いた時に感じた。
大我の深いため息が聞こえたと同時にあたしのスマホが鳴り響いた。
「ごめん。BOSSから。出るね」
『もしもし。先日はお疲れさまでした』
『お疲れ。ねぇベイビー今どこ?』
『マイアミです』
『ハードにやってるわね。揉めてるって?』
BOSS程じゃない
あたしは国を移動したら必ず2日くらいは時差ボケ調整してるもん。
こんな時でもBOSSの声を聞けばあたしは笑顔になれる。
『どうして知ってるんですか?』
『タイガのエージェントってのから電話来たのよ。嘘かと思っちゃったわ。まさかもう違う仕事してるなんて思わないじゃない?あたしが仲介するから仕事続けなさい』
『ほんとですか!?』
『当然よ‼愛弟子バカにされて黙ってられないわ』
『ありがとうございます』
メイクを知らないジェシカにコケにされようがBOSSがあたしを認めてくれてるならそれでいい。
だってあたしはメイクが仕事なんだから。
あたしが認めて欲しいのはBOSSとクライアントだけ。