第24章 家康の特訓
(分かってる、分かってるもんっ)
でも、出来ないから悔しくて情けなくて、不安になる。
今も家康の馬である 白石 と、もう一頭を乗り替えながら練習している。
瑠璃は悔しそうな表情をしてから、
睨むように家康を見る。
「分かってるなら、早くーー…」
逸らされない瑠璃の銀鼠色の瞳が滲んで、
目にはみるみる涙が溜まり始める。
「撃つ瞬間と間合の、感覚を…つ、つかんで、よね……」
涙のいっぱい溜まった目で見られ、家康の口調が弱く、しどろもどろになる。
(泣くな…頼む、泣くな…)
家康は困って翠色の瞳を逸らす。
「泣いたりしない、大丈夫っ」
袖で溜まった涙を拭う。
涙声で、弱気になった心を振り払うように、
強く言い切る。
「絶対に習得してみせます!」
ギッッ と奥歯を噛み締め、右手に持った手袋を強く握りしめ拳を作る。
(本当……)
「女にしとくの勿体無い。
その勇ましい発言、買ってあげる」
温情のある笑みを見せながら
「明日も頑張って」
家康はそう言って、ぽんっ と瑠璃の頭に手を置いてから、白石を引いて厩舎へと歩いて行った。