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彼女と彼の1年間

第7章 誤解



『よりによって、この場所か』

ボーっと海を眺める菜月。
隣のユージンも同じことを思っていた。
あれから随分経った。
大丈夫だと思って来た。
でもそれはユージンだけだったようだ。
当の本人にも、まだ気づかない心の傷。
じわり、じわりと忍び寄る心の闇。

人の死を乗り越えるなんて、簡単なことではないのに・・・。



「うーみーはーひろいーなーおおきーいーなー★」
「・・・・・・楽しそうですね、ユージン」

ユージンのお気楽な歌声に、菜月にしては、ものすごく低い声で彼を咎めるようにしていった。
ギクリと肩を揺らしたユージン。
少ししてから、菜月をフォローするように声をかける。

「ナツー、本当ありがとうね。盛り上がるとみんなお酒飲んじゃうからさー」

今日は、海へ来た一行。
しかし、いつもの面子ではなく、菜月にとっては忌まわしいあのカラオケでのメンバーだったのだ。

菜月とキッド、そしてユージン。
その他に、ユージンの仕事仲間が数名。
ただでさえ、大人数で大騒ぎするのは菜月は好きではないのに、あのイヤがらせをしたメンバーとなると、イライラがつのる。

そして、今回はさらに・・・

「ねぇねぇ、キミさぁ・・・彼女とかいるの?」
「かっこいいよねぇ。今度遊んでよ」
「・・・失せろ」
「えー、いいじゃーん。キッドくんだっけ?お酒飲む??」

背後から聞こえる会話に、菜月のイライラはさらに増す。
ピクリと眉が動き、口元もへの字に歪む。
キッドは、知らない女性に対しては面倒臭そうに追い払おうとしているのだが、女性たちがなかなかあきらめなかった。
そんな状況を目の当たりにして、ユージンは今更ながら「失敗したな」と反省するのだった。

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