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彼女と彼の1年間

第4章 墓参り


無理矢理キスをしたのに、菜月は怒りもせず、キッドを責めることもしなかった。
ただ、「死」という言葉に過去を思い出して泣いていただけ。
キスをされたことなど、彼女にとってはどうでもいいことなのかもしれない。

そう思ったら、キッドは自分の行為をとても子供じみて、情けないことをしたのだと嫌でも自覚した。

菜月は、自分よりも大人だとキッドは思う。

実際に年齢を聞いたわけではないが、日ごろの態度や考え方を間近で見て、どこかキラーとダブるときも多々ある。
キラーは自分より少し年上だから、そのせいもあって菜月も自分より上なのだろうと。
実年齢もそうだが、人としての器量も菜月の方が上回っているとも思う。

「大人だよな、お前ぇは」

不意に出てきたキッドの正直な気持ちに、菜月は飲んでいたコーヒーでむせた。

「っ!、ゲホっ!・・・な、なんですかいきなり」
「・・・そう思っただけだ」
「・・・・・・」

やけにキッドが凹んでいるように見えた。
菜月は、この前のキッチンでの出来事のことを言っているのかと推測した。
こういう時、どう対応すればいいのか菜月にはわからない。

キスされた時だって、もっと違う反応の仕方があったのではないかと、後になっていろいろ考えさせられた。

『別に、嫌ではなかったしなぁ』

カチャンと、意味もなくコーヒーをかき混ぜていたスプーンの動きが止まった。

 「?、どうした?」

キッドが不思議そうに訊くと、ハッと気付いた菜月が「なんでもないです」と答えて、残りのコーヒーを飲んだ。

『嫌じゃなかった・・・?なんで?』

湧き出た気持ちに、自分でも理解しがたい物が現れた瞬間だった。

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