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彼女と彼の1年間

第9章 絵


キッドは物音で目が覚めた。
あの後、菜月と眠り込んでしまったらしい。
彼女の思い込みで繋がれた鎖は、断ち切られた。
きっと、過去を引きずる菜月は、もういないだろう。

「?」

物音の正体が知りたくて、キッドは起き上がった。
上半身を起こして、部屋を見渡すと、菜月がデスクの掃除をしているのが見えた。
ダンボール箱に、死んだ彼の画材道具を丁寧に詰めていく。ひとつひとつ、手に取って、眺めては箱へ。
この動作を繰り返している。

 「捨てるのか?」
 「!」

キッドの声でハっとする菜月。
おはようございますと、まず挨拶をしてから、
キッドと手に持った画材を見比べていた。

 「捨てるというか・・・まぁ、片付けてます」
 「無理してねぇか?」
 「いえ、綺麗にして・・・使えるものがあったら、使わせてもらおうかと思いますし」

キッドは、昨日の今日で気持ちを切り替える必要はないと、遠まわしに言った。
だが、菜月は大丈夫だと言うように、片付けの理由を明かした。
ごちゃごちゃになっているのを、綺麗に片付けて、その上で自分が使う絵の具や筆は、足りなくなったら、彼の代わりに使おうというものだ。
幸い、使っている画材のメーカーは一緒だった。
箱には、使用途中のスケッチブックが詰め込まれた。その上に、未使用の絵の具が置かれる。
デスクの引出しには、残った画材道具のみになった。
仕切りで区切り、取り出しやすくする。

全ての作業がすむと、菜月は手をはたいて、キッドに向かった。

 「朝食にしましょうか」
 「・・・おう」

そうして、今日も二人は占い師を探して街に出た。

※※

二人並んで歩く。
昨日までは、ただそれだけだったのだが。
今日は少し違っていた。
二人の距離が、自然と近くなる。
キッドがちらりと、視線を斜め下に持っていくと、菜月がすぐ近くにいる。
上からでは、彼女の表情はわからない。
どんな顔して、隣にいるのだろうか。
ふと、そんなことを考えていると、

「?」
「!」

視線を感じていたのか、#菜月#がキッドを見上げた。
慌てて、キッドは菜月のいる方とは逆の方に視線を注いだ。

「・・・・・・」

その不可解な行動に、菜月は首をかしげたが、何もなかったように街を進んだ
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