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彼女と彼の1年間

第8章 鍵


 「今日は、アイツと出かけてくる」
 「あ・・・そうですか・・・」
 「悪いな」
 「いえいえ・・・実は私も・・・」
 「・・・そうか。夜には戻る」

朝食時の会話が、なんだかくすぐったい。
お互いが想いあっているのではと、勘付いてから、どこかぎこちなくも思える。

キッドはユージンと出かけるらしい。
また、いかがわしいところに行くのではないかと、不安な顔をすると、キッドは菜月の頭をぐしゃぐしゃに撫でた。

 「わ・・・き、キッドさん?」
 「んな顔すんなよ。占い師のことで気になることがあんだよ・・・お前ぇは?」
 「・・・月命日なので」

菜月の不安を消そうと、キッドなりのスキンシップだった。
乱れた髪を手で直すと、キッドはユージンの家にいくと説明してくれた。
そしてキッドから行き先を問われた菜月も、今度は正直に言う。

月命日とは言ったが、毎月行っていたわけではなかったから、キッドから不思議そうな顔をされてしまった。

 「あの人に、伝えたいことがあるんです。今日は一人で行きます」


先日の出来事で、少しずつ気持ちが動いているのが菜月にもわかった。

まだ、踏ん切りがつかないようではあるが、一歩前進しようとしている。

 「気を付けて行けよ」
 「はい、明るいうちに帰りますね」

また変出者に襲われては、キッドとしてもたまったものではない。
寺から帰るときには、遅くなり過ぎない様にすると菜月が約束した。

※※

 「で、何か用ですかー、ノロケ話はお断りだよー」

ユージンは、気落ちしていた。
キッドは、その理由がなんとなくわかるが、ここで彼を追い詰めるつもりもない。

だいたい、菜月を幸せにしろと言っていたのはユージンなのだが、
やはり自分の好きな人が、他の男のことを想うのは辛い様だった。

 「そんなんじゃねーよ。だいたい、あの女には何も言ってねぇし」
 「・・・弱虫」
 「手前ぇ・・・背中を押すのか、邪魔したいのかはっきりしろ」

未だ、ユージンの行動には矛盾が見えた。
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