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ビタンズの惨劇

第5章 暗夜



翌日から、私はすっかりヤーシュ様の部屋でヤーシュ様と共に朝まで眠ることになった。
嬉しかった。けれど相変わらず夜は怖くて、日が暮れるとヤーシュ様のそばを離れることができない。

ヤーシュ様はそんな私を見かねたのか、ある日私を呼びつけて、小部屋の窓の脇の壁を指差して見せた。

そこには大中小の剣がかかっていた。

「ペシェ、お前のことはボクが守る。だがいつもそう出来るわけでもない。何かあったときは、お前がこれを使え」
「私、剣なんて。持ったこともありません」
「そうだろう。だが、必要になる時もある。相手を殺せと言うのではない。とにかく、ここにこれがあり、お前はいつでもこれを使えるということだけ覚えておけ」

私は壁の剣を見た。
ずんぐりと重たそうなそれは、ヤーシュ様に似て冷たく、 けれど頼もしさもあるような気がした。
これを使う機会などくるのだろうか。
どうかそんな日が訪れませんように。

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