第8章 イタチ。切
目が覚めた時、布団の中にいた。
ここは……。声を発しようとも身体は動かない。
首だけ左右に触れば、イタチがこちらを向いて腰掛けていた。少し疲れた表情を浮かべていた。
「っ!!……イタチく……ん…」
合図のように、花奏へゆっくりと近づく。
「ここは、あの場から少し離れた宿です。鬼鮫には少々外してもらいました」
ふわりと髪を優しく撫でながら、イタチは声を出す。
「イタチ君……!私は……何も知らないわ。カカシが何を知ってるかなんて、何も知らないの……」
花奏は、正直に答える。
本当に何も情報を知らない。動かない身体では逃げる事も出来ない。黙ってイタチの返事を待っていた。
「……知っています。分かっていました」
淡々と答えるイタチに花奏は、目を大きく開ける。先ほどとは正反対の言葉を出しているからだ。
「……っ!?……じゃあ、どうして、あの場で……」
イタチを、涙目になりながら見つめる。
「……私を…殺さないで、こんな所で寝かせているの?」
今の状況が全く理解出来ず、イタチに答えを聞いた。
涙を潤ませながら。
枕に流れ落ちゆく涙を、イタチは切なそうな瞳を浮かべ、そっと近づき、花奏の涙を拭う。
「花奏さんと……お話がしたかった。そして触れたかった。それだけです。お久しぶりですね。貴方は相変わらず美しく、そして可愛らしい……」
呟き、布団を払い退けて、身体を抱きしめる。
「っ!……や、イタチ君、辞めて、お願い……!私は許してないのよ?同胞を殺して里を抜けた事を……それに
……あの事も……!」
抵抗しようにも力が入らない。花奏は、か弱くイタチの上半身を押すが、少しも身体は動かない。
「花奏さん……抱かせてください…もう一度…」
「っ!……イ、イタチ君…」
イタチは優しく手を絡め、指を恋人のように繋ぎ、首にもう片方の手を回した。