第21章 暗部カカシ
「もう……、あのさぁ……!」
とん、と当たったのは、
カカシの匂いと体。
私の肩に頭を乗せている。近い。
不意打ちを喰らい、心音が早鈴を鳴らす。
カカシ隊長は、身体を傾けて
私に身を任せて眠りについていた。
小さく規則的な吐く息が耳にかかる。私の右肩を貸すようにもたれかかってきた。
「ちょ…、ちょっ……と……」
手で、カカシの身体を離そうとして、起こそうとしたけれど、その手を止めてあげた。
敵の気配は周りには無い。木ノ葉隠れ里まで、あと数キロ先だ。
万が一に今、奇襲に遭ってしまって襲われても大丈夫。わたしが起きているから、ある程度は対応出来る。
だいたい、あの「はたけカカシ」が奇襲ごときで怪我をするほど、熟睡するわけが無い。
「昨日の任務、結構しんどかったもんね……」
返事をしない男に、わたしは独り言のように労いの言葉をかけた。
前日、抜け忍を始末した帰り、不運にも盗賊に見舞われてしまった。しかも上忍クラスの忍が数名がいるという、これまたついていない事態。
2人で何とか対応したけど、いつもより苦戦してしまった。
カカシはその際、写輪眼を使い過ぎて疲労困憊だった。歩いて帰るのも辛そうなカカシを、私は同情しながら見ていた。
私は上に立ちたくないから、逃げているが、カカシは違う。
隊長としてリーダーとして、頑張っている。努力している。
毎日毎日、仕事仕事。
演習。たまに休み。
隊長だから、任務を遂行するだけではない。部下を育てたり、文句を言う仲間を宥めたり、まとめていかなければいけない。
いつもいつも、気を張り詰めて、弱音や気を抜く暇がない。私情を挟んで任務を遂行できないなんて出来ない。
私は、無防備なカカシの髪の毛を、触るように手で優しく触れ、頭を撫でてあげた。
「任務中の顔じゃないよ、その顔」
カカシの手が近くにあった。
触りたくて手を握ると、握り返してきた。
「……カカシ?」
「10分だけ寝かせて。凄く落ち着く」
そう言って本当に寝ちゃったカカシ。
握る大きな手が、やけに心地良かった。