第1章 IF:【冬春】エース救済・主人公生存
「ごめん、火傷…」
「火傷なんて、今更傷が少し増えただけ」
「海軍も、もう戻れなくなった…」
「エースが生きてるんだから良いのよ」
「命を、懸けさせて…」
「私はエースの姉ちゃんなんだから、当然でしょ?」
俯いていた顔を上げる。姉は、姉の顔をしていた。優しくて、大好きだったあの頃の姉がいた。目頭が熱くなる。なんだよ、今度は俺が泣く番かよ。
「ねぇ、ちゃん、」
「うん、おいでエース」
ベッド上で腕を広げる姉にゆっくり近く。傷に触らないように優しく抱きしめる。こんなに、姉は小さかっただろうか。あの頃、俺の世界だった姉。抱き込めば、すっぽり腕の中に収まってしまった。
「…いっぱいごめん、助けてくれ、て…ありがとう…!」
「私も、たくさんごめんね。生きててくれて、嬉しいよ」
蟠りが、全部解けたわけじゃない。16年間の距離は、なかなか縮まるものではない。けれど、確かに、あの頃の姉弟の形に、戻れた気がした。
*
「ポートガス・D・、エースとは血の繋がった姉弟です。先の戦争では、治療してくれてありがとうございました。恩は返します。私は何をすれば良い?」
「そうか、。俺の娘になれ」
「むすっ…!?」
「野郎ども!!家族が増えたぞ!宴だ!!」
「えっ!!ちょっ、!」
男たちの雄叫びにの抗議の声は掻き消された。
怪我の粗方治ってきたは白ひげ本人に挨拶をしに船長室に訪れただけなのだが、勢いのまま娘になれと言われて抗議虚しく事実上、白ひげ海賊団の仲間入りを果たした。
「よう、。飲んでるかよい」
「不死鳥マルコ…」
「家族なのにそりゃねぇだろい…」
「あっ、そっか。ごめんマルコ」
海兵だったときの癖でつい二つ名で呼んでしまう。酒を渡してくれたジョズに対しても「ダイヤモンドジョズ」と呼んでしまい、マルコのように苦笑させてしまった。
「エースは幸せね、こんな素敵な船に乗って…家族にも恵まれて」
「お前さんももう家族だろ」
「ふふ、そうだった」
船員に囲まれたエースは笑顔だ。太陽のような笑顔。私の大好きな表情。
「姉ちゃん!」
大好きなエースに、大好きな声で、大好きな笑顔で呼んでもらえる。嗚呼、私はなんて幸せ者だろう。