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【ONE PIECE】冬来りなば春遠からじ

第5章 実弟の追憶


幼い頃、姉から一人で森に入ってはいけないと強く言われていた。とても危険だから、と。
いつも姉は食い物を獲りに一人で森の中へ動物を狩りに出かけていた。そんな姉の手助けをしたかった、そんな単純な理由。俺は姉が大好きだった。姉も俺を愛してくれていた。
『おやすみ、エース。大好きだよ』寝る前に必ず俺に言ってくれていた。

姉を追って少ししか探索をしたことのないジャングルを駆け抜ける。迷子になりそうだが、何度か来たことのある道は覚えがある。ここは覚えてる、ここの木も見覚えがある。あの少しひらけているところで、姉と鍛錬したことがある。しかし、姉がいるだろう奥へ奥へと進んでいくと似たような景色ばかりが広がっている。

「やばい、迷った…」

もうダメだった。同じ道を繰り返し進んでいるんじゃないかと錯覚するほど、あたりは木々に囲まれている。来た道を戻ろうにもどこから来たのかわからなくなっていた。
姉との約束も破ってしまった。俺はここで野垂れ死ぬのか。そんなことない、ダダンの家に帰れる。どうやってだよ。
自問自答を繰り返していると茂みの向こうからガサガサと音が鳴った。もしや姉が迎えに来てくれたのでは。そう思って泣きそうになった表情を引き締め、茂みを振り返る。

「ねぇちゃん!」

違う、姉ちゃんじゃない。いつも姉が狩って来るような、それよりも大きな熊だった。奴の口から覗く牙は鋭い。あれに噛まれたらひとたまりではない、そんな事が容易に想像できた。
当時の俺に、その熊を倒す程の力はなかった。カルガモの親子のように、いつも姉の後ろをついて回っていた、弱っちいだけのガキだった。
グルル、凶暴そうな見た目から凶暴そうな唸り声。大きな体とは反対に動きは素早い。巨大熊は勢い良く俺に向かって駆け寄る。俺の何倍もある巨体の振りかぶった右の前足が俺に向かってくる。空気を割く音が聞こえた。

「うわぁっ!?」

咄嗟に避けたが服にかすって破けてしまった。怖い、躱した拍子に尻をついてしまった俺はもう動けなくなっていた。
終わりだ、もう俺は死ぬのか。

「ねぇちゃ、」
「エースッ!!!」


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