第9章 9Qー権力行使
「テツヤ……。」
そっと声をかけると、汗で濡れた水色の髪を揺らしながら振り向く。
キョトンとした顔でこちらを見るテツヤ。
あれ…。
思ったより落ち込んでないっぽい。
「大丈夫?」
「はい。」
「ならいいけど…。」
少し間が空いてから、テツヤ再び口を開いた。
「名前が、僕なら大丈夫 と言ってくれたときから、弱音は吐かないって決めてるんです。」
優しく微笑みながら言ったテツヤ。
本当にこいつは強いな…。
「………私も走る…!」
「え……。」
「ちょっと走り足りないって思ってたしね。」
「でも…。」
私は躊躇するテツヤの手を取り、グラウンドを指差す。
「早く行こ?」
私がそう言うと、テツヤは少し驚いた顔をしてから、ふわりと微笑んだ。
「その前に…。何か羽織らないと風邪をひいてしまいます。」
そう言い、体育館の脇のポールにかけてあった私のパーカーを手渡してくれた。