第2章 第一章失踪と置手紙
殴られた頬がズキズキする中、急いで行動を起こした。
「すいません、退院したいんですけど」
「は?」
「えっと会計をお願いします。後は…」
とりあえず荷物の中に最低限必要な物はあったので会計を済ませてそのまま病院を出て行く。
勿論主治医には止められたけど、こっちも強気で出た。
そして向かった先は私が以前まで下宿していたアパート。
「マナちゃん。今からお見舞いに行こうとおもってたんやで?もう退院やったん?」
「強制的に退院手続きをしました」
「はて?」
首をかしげる綾香さんはこのアパートに管理人で、私が通っていた大学の生徒はこのアパートに住んでいた。
「すいません、家賃を滞納していて」
「それはかまへんよ?ちゃんとまどかちゃんからも事情は聞いているし、光熱費は発生してへんからね」
「その、荷物を引き取りに来ました」
「学校側も酷いわ。自主退学やなんて…別に大学辞めてもここに住んでもええんやよ?」
数多の不動産を持つ綾香さんは貧しい学生の支援もしているので、とても太っ腹だったけど。
甘えるわけには行かない。
「ありがとうございます」
「まぁ、引っ越し先が決まっているんなら安心やわ。万理君と同棲するん?」
「いいえ、万理さんとは終わってますので」
「はい?」
「今までお世話になりました。後日ご挨拶に伺います」
そう言って、部屋にある仕事道具とノートパソコンを持って出て行く。
「グッバイ私のマイホーム」
ここで生活した日々は苦しくも楽しい生活に溢れていた。
優しい管理人さんと、気心の知れた友人。
私が貧しい大学生生活を送りながらも充実した日々を送れたのは、このアパートの住人のおかげかもしれない。
「さようなら」
泣きたくなるのを我慢しながら私はその後すぐに業者さんに連絡して持ち出せなかった物を処分してもらえるように頼んだ。
何も残さない方が良い。
後は万理さんのアパートに手紙を入れて置いた。
「幸せになってね万理さん」
直接別れを告げることができない臆病な私を許してください。