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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第16章 葡萄色 - ebiiro -





傷だらけになった手で馬の手綱を握り、
安土への帰路を急ぐ。

いつかまた顕如と争うことがあるかもしれないが、あの男にもう力は残っていないだろうという信長様の判断で、今回の戦は幕を下ろした。

顕如のしたことは卑劣だけど、仲間のために復讐の鬼になる気持ちは分からなくもない。ただ、関係の無い亜子まで利用したことを許すことは出来ないけど、


今回の戦で、
俺のカタはしっかりとった。


恨みの連鎖を断ち切るため、

今川の残党は武器を奪い野に放ったが、この判断をいつか後悔する日がくるかもしれない。根深い恨みの種は、こんなことでは取り除けないだろうから。でも、次の代にまでこの連鎖が続かないように。

そう願って。





戦が終わった今、
頭に浮かぶのは亜子の柔らかい笑顔だけだ。


はやく帰って抱きしめたい。


体の疲れも忘れてしまうほどそう思ってる。




安土城にたどり着いたのは、
帰路について三日後だった。

城門で秀吉さんや、残していた家臣や数人の女中たちが駆け寄ってくる。その中に、亜子の姿はない。何よりも先に彼女の顔を見たかったけど、戦の後処理に追われ、気がついたら夕暮れで。やっと、名前に会える。そう思って廊下をやや早足に歩いた。

なのに、



「家康。ちょっと待て。」



秀吉さんが眉を寄せてそう声をかけてくるから、思わず足を止める。



「何ですか?」
「亜子の顔を見に行くつもりだろ?それよりも先に話すことがある。」
「………後からじゃだめな話なんですか?」
「ああ。」



ため息を一つつくと、素直に返事をした。

秀吉さんがこんな顔をしてるって事は、素直に従っておいたほうがいいだろう。あとでゆっくり名前亜子の部屋に会いにいけばいい。そう思って。





「ちょっと面倒なことになってる。」

「なにがですか?」

「お前と萩姫のことだ。…城下に萩姫がお前の子を身籠もったという噂が広まっている。萩姫が本当に懐妊しているかはまだわかってないが、…念のため聞く。お前の子じゃないよな?」

「…は?なんなんですか、その根も葉もない噂。そんなわけ無いでしょう。」



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