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【 イケメン戦国 】宵蛍 - yoibotaru -

第16章 葡萄色 - ebiiro -





長い長い道のりを、
護衛の人と馬に乗って進む。

数日をかけてやっと辿り着いた安土城の門には、秀吉さんがすごく心配そうな顔をして待っていた。



「亜子…!」
「…秀吉さん、御心配をおかけして、」
「謝らなくていい。怪我はないか?」
「はい。」



喜作の奴は捉えてから自分の領地に帰らした。お前が信長様の愛妾だと聞いて、青ざめていたから、もう手は出してこないだろう。



「…奴にはもっと灸を据えても良かったんだが。」
「大丈夫です。私にも非はありますし、」
「お前はそう言うと思った。」
「…それより、雪ちゃんは、」
「ああ。無事だ。今は所用で城にはいないから、帰ってきたら存分に顔を見せてやれ。」



本当に心配してたからな、

その言葉に、雪ちゃんの顔を思い浮かべた。

信長様から無事だという話は聞いていたけれど、早く顔を見て無事だと確かめたい。城に帰ったら会えると思っていたのに。…あの時、最後に言いかけていた言葉は何だったんだろう。

私がそんなことを考えていると、秀吉さんが、突然、



「それから、またしばらく城から出るな。」



そう言った。



「針子の仕事だけでは気が紛れないなら女中の手伝いをしても構わない。」
「…え?」
「一応姫だからな。させたくはないんだが、」
「…あの、」
「とりあえず戦が終わるまでは城から出るな。」



城の警備は整えているが、信長様も不在な今、またお前が拐われたりしたらと思うと気が気じゃない。
すまないが、しばらく城から出ないでくれ。

そう言われて、訳がわからないまま頷いた。

いや、頷くしかなかった。

だって、秀吉さんは全く私に口を挟む暇を与えてくれないし。それに、眉を寄せて言う彼に、これ以上心配をかけたくなかったから。



「…俺も戦が終わるまで城にいる。」
「はい。私も城から出ません。」
「そうしてくれ。お前も気になるだろうから、状況は報告するようにするから。」
「…ありがとうございます。」



秀吉さんはそういうと、私の頭を撫でて城の中に入って行った。その後を追うように私も安土城の廊下を歩いた。



戦の間、私に出来るのはただ待つことだけ。

ただ無事を祈ることだけ。



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