第4章 初期刀曰く、「寂しがり屋」
「はー…やっと終わった」
「お疲れ様。そうだ、この間の練習ノート貸して?」
「あー、俺今日バイトだから預かっといて。なんなら回し読みしてくれて構わん」
「誰が好き好んで借りたノート他人に回すのさ。今度ご飯奢るよ」
「お、ラッキー。じゃーおつかれー。またなー」
「うん、またね」
春と別れた後、鞄をさっと取って小さな林へ向かう梨都。
彼はそこで小さな竹筒を開けた。
「こんのすけ、本丸に出勤しよっか」
「はい!」
狐が返事をする。
するとぱあっと強い光が辺りに広がって、梨都の体を包み込んだ。
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「ご主人様、おかえりなさい!」
大きな日本家屋__本丸の門をくぐると、眼鏡をかけた青年が駆け寄ってくる。
「ただいま、亀甲」
「そうだ、薬研くんから手紙が届いているよ」
「後で目を通しておく。執務室の机の上に置いといてくれ」
「ご主人様の命とあらばっ」
ぱたぱたと駆けていく近侍の後ろ姿を見送って、梨都は呟く。
「…ホント月城さんと似た声してるよなー」
こんのすけと梨都が廊下を歩いていると、大広間から何やら音楽が聞こえてくるのにこんのすけが気づいた。
「何かしているんですかね?」
「…これ、グラビの曲じゃね…?」
襖に手を掛けて力いっぱいそれを開け放つ梨都。
スパァン、と小気味よい音が響いて、大広間にいる者の視線が一気に襖に集まった。