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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第5章 姫巫女と最初の友達


「ううん。これ、魔法じゃないの。――出てきていいよ、雪音」

 後半の言葉は、ハリーたちに向けられたものではない。
 雪音と呼ばれた『何か』がシオンの陰から顔を出した。
 雪のような真っ白なきつねで、尾が四つもある。

「この子、さっき召喚した《妖狐》の雪音。あの子の前だから言わなかったけど、幻術で黄色く見せてるだけなの。――雪音、術を解いて」

 コクリと頷くのと同時に、スキャバーズの身体の色が頭の先からゆっくりと尾にかけて、元のねずみ色に戻った。

「あ、身体の色が戻った!」

 ロンがそう言ったときには、雪音と呼ばれたきつねは姿を消す。

「じゃあ、今のきつねも、リュウグウに仕えてるっていうモンスターなの?」

 ハリーの問いに、「そうだよ」と頷いて見せた。

「ゲツエイの話だと、シオンは神さまも召喚できるんだよね? 僕、神さま見てみたい!」

 興奮するロンだったが、それは無理だ。

 そもそも、神を召喚するという表現から間違っている。
 力を借り受けるために、神を依り代へ降ろすのが正解だ。

 それに、神を降ろすには相応の手順が必要で、簡単にできることではない。

 そう説明すれば、二人はガッカリする様子もなく目を輝かせて、「そうなんだ!」と頷いた。

 龍宮の力の話はここで終わり、三人は寮について話し始める。

「シオンのお父さんもホグワーツ出身者だよね?」

 ずっと寮の話もしたかったハリーがシオンに話を振った。

「どこの寮だったの?」

「グリフィンドールだよ。ロンのお兄さんたちは?」

 シオンの言葉に、さっきまで元気だったロンが、小さな声で「グリフィンドール」と答えて肩を落とす。
 何か気に障ることでも言っただろうかと不安になるシオンに、ロンはボソボソと続けた。

「父さんと母さんもそうだった。もし、僕がそうじゃなかったら、なんて言われるか。レイブンクローだったらそれほど悪くないかもしれないけど、スリザリンなんかに入れられたら、それこそ最悪だ」

「そこって、ヴォル……つまり、『例のあの人』がいたところ?」

 シオンが一つ頷く。

 ハリーが『例のあの人』の名前を、途中まで口にしかけたことには触れなかった。


『例のあの人』――ヴォルデモート卿の名前を。


 魔法界の誰もが口にすることを憚(はばか)り、耳にすれば震え上がる彼の人の名前だ。
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