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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第18章 姫巫女と禁じられた森


 グリフィンドールの談話室では、ロンが帰りを待ってくれていた。

 待ちくたびれて寝てしまっていたロンをハーマイオニーが起こすと、ハリーは森で遭遇したおぞましい影や、フィレンツェの話をまくし立てるようにして一気に話す。
 その様子は、身体の中でようやく追いついてきた恐怖を紛らわそうとしているようにも見えた。

「スネイプはヴォルデモートのためにあの石が欲しかったんだ。ヴォルデモートは森の中で待ってるんだよ。僕たち、今までずっと、スネイプはお金のために石が欲しいんだと思ってた……でも、違ったんだ!」

 ヴォルデモート、とハリーが繰り返すたびに、あの影が戻ってきそうな気がして、シオンの背に悪寒が走る。

 そんな中で、たまりかねたようにロンが「その名前を言うのはやめてくれ!」と震える声で止めた。けれど、ハリーは止まらない。

「ケンタウルスは予言を重んじる。予言されたことに干渉しちゃいけない掟なんだ。惑星はヴォルデモートが戻ってくることを予言してる。ベインは、僕を助けようとしたフィレンツェを怒ってた。ヴォルデモートが僕を殺すなら、それを止めちゃいけないってベインは思ったんだ。僕が殺されることも、惑星が予言してたんだ」

「頼むからその名前を言わないで!」

 とうとう、ロンは耳を塞いでしまう。ハーマイオニーも青い顔をしていた。

 魔法界の人間にとって、『ヴォルデモート』の名は恐怖の象徴であり、禁句だ。

 シオンも絶対に口にはしない。
 言葉が言霊となって、現実に還ることを恐れるからだ。

 けれど、魔法界に来て日が浅いハリーには、その名前が持つ意味も力も分かるはずはなく、熱に浮かされたようにして続けた。

「もし、ヴォルデモートが僕を狙っているんだとしたら、僕はスネイプが石を盗むのをただ待っていればいいんだ! そしたら、ヴォルデモートが僕の息の根を止めにくる……」

「そんなのダメ!」

 シオンは叫んだ。
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