• テキストサイズ

ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第5章 姫巫女と最初の友達


「別にいいじゃない。僕だって、ちょっと前までお金も持たせてもらえなかったし、洋服だって太った従兄弟のお古だからブカブカだったし、誕生日を祝ってくれる人だっていなかったよ」

 それに、とハリーは続ける。

「ハグリッドが教えてくれるまで、自分が魔法使いだってことも全然知らなくて、父さんと母さんのことも……学ばないといけないことばっかりなんだ――きっと、僕、クラスで一番ビリだよ……」

 ハグリッドは、ハリーに入学の案内を届け、教材を買うのにつき合ってくれた友人なのだという。
 けむくじゃらの大男だが、気が良く優しい人なのだとか。

 ずっと気にかかっていたのか、ハリーは顔を伏せた。
 それを見て、シオンの胸が痛む。

 もし、駅で関わりを持つことがなかったなら、自分はこの先も関わりを持つことなく、父の言いつけ通りに過ごせただろう。

 けれど、彼の優しさに触れ、弱さを知った今、知らん顔をすることなどシオンにはできなかった。

「大丈夫だよ、ハリー。わたしにできることなら、何でもやるから」

 父の言葉を裏切ることに、いささかの罪悪を感じないわけではない。
 それでも、目の前で不安に押しつぶされそうな少年を、黙って見過ごせない。

『さよう。只人より生まれし魔法使いも少なくはない。それらとそなたの出発点にさほどの違いもなかろう』

 シオンを諫めることなく、月映がハリーに励ましの言葉をかける。

「そうだよ、ハリー。マグル出身の子もちゃんとやってるよ。心配ないって!」

 やがて、ロンドンを出発した汽車は、どんどんスピードを上げて走った。
 シオンもすっかり二人に打ち解け、時おり声を立てて笑いながら、自らのことも少しずつ話す。
/ 362ページ  
スマホ、携帯も対応しています
当サイトの夢小説は、お手元のスマートフォンや携帯電話でも読むことが可能です。
アドレスはそのまま

http://dream-novel.jp

スマホ、携帯も対応しています!QRコード

©dream-novel.jp