第13章 姫巫女とクィディッチ
「まるで、あたくしたちと同じ観客ですわね」
「試合に参加しないのかな?」
シオンとヒマワリが言うと、シェリルは淡々とした声で二人の言葉を否定する。
「たぶん、あれは作戦。ハリーはクィディッチ初心者だし、スニッチが現れるまで待機させて、できる限り攻撃されないようにしてる」
「そうさな。荒っぽい試合に巻き込まれんようにしておるんだろう。シーカーはどうやったって攻撃されるからな」
シェリルの推論に、ハグリッドが頷き、首から下げた双眼鏡でハリーの様子を覗いた。
不意に、ハリーをブラッジャーが襲うが、彼はそれをヒラリと躱す。
どうやら、上手く避けられたようだ。
ブラッジャーを追いかけてきたビーターのフレッド・ウィーズリーが駆けつけ、ボールをスリザリンのキャプテンであるマーカス・フリントめがけて叩きつけていた。
試合は怒涛の勢いで続いていく。
『さて、今度はスリザリンの攻撃です。チェイサーのビュシーはブラッジャーを二つ躱し、双子のウィーズリーを躱し、チェイサーのベルを躱して、もの凄い勢いでゴー……ちょっと待って下さい! あれは――「スニッチ」か?』
最初に気づいたのは、実況していたリー・ジョーダンだった。
スリザリンのチェイサー――エイドリアン・ビュシーは、左耳を掠めた金色の閃光を振り返るのに気を取られ、クアッフルを落としてしまう。
普段から黄金の軌跡を見慣れているシオンも、すぐに気がついた。
キラキラと輝く小さな物体が、グラウンドの上空を勢いよく飛んでいることに。
動いたのはハリーの方が早かった。
少し遅れて、スリザリンのシーカー――テレンス・ヒッグズもスニッチを視認したようだ。