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ハリー・ポッターと龍宮の姫巫女

第12章 姫巫女とトロール


『他愛ない。愚かな鬼よ、姫巫女の慈悲に感謝することじゃ』

 再び、轟音を上げてトロールが倒れた。
 今度こそ、完全に気を失っている。

「え……し、死んだの……?」

 ハーマイオニーの言葉に、久遠が鼻を鳴らした。

『侮るな。シオンの命令通り、ちゃんと生かしておるわ』

 不服そうに言う彼女は、忌々しそうにトロールに蹴りを入れる。
 しかし、トロールが動くことはなかった。
 仮に意識を取り戻したとしても、起き上がるのは難しいだろう。

「ありがとう、久遠」

 助けてくれたことと。
 そして、自分の望みを聞き入れてくれたことを含めて礼を言えば、彼女は嬉しそうに微笑んだ。

『気にすることはない。元より、妾は其方(そち)の力。必要とあらば、いつでも駆けつけようぞ』

 久方ぶりに其方の唄が聴けただけで、妾は満足じゃ。

 そう言い残して、久遠の輪郭が解け、消えた。

 そのタイミングで、遠くからバタバタと駆ける足音が迫る。
 いや、むしろ遅かったくらいだ。

 物が壊れる音やトロールの唸り声など、室外や階下に聞こえないはずはない。

 ほどなくして、女子トイレにマグゴナガルが飛び込み、続いてスネイプ、最後にクィレルがやって来た。

 クィレルは倒れたトロールを前に悲鳴を上げ、胸を押さえてひび割れたトイレに座り込む。

 スネイプはトロールを覗き込んだ。
 その傷は、一年生が魔法でつけたとしては、異常なものだと分かっただろう。

 マグゴナガルは唇を蒼白にして怒っていた。
 今までの授業では見たことのない表情に、シオンは身を縮こめる。
 正直、異形を見慣れているシオンからしてみれば、トロールよりも恐ろしかった。

「一体全体、あなた方はどういうつもりなんですか?」

 声自体は冷静だが、そこには確かに、ピリピリとした怒りが滲んでいる。

 ハリーはロンを見て、ロンがシオンを見て、シオンはハリーへ目を向けた。

 いつの間にか、月映の姿はない。

 そんな三人に、マグゴナガルは続ける。
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