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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第4章 エピローグ


『調子はどう?』
「万全とは言えないが、やるしかない」
『そう。でも、ナショナルの時みたいな滑りが出来れば、大丈夫じゃない?』
「何故、貴方がカザフナショナルの事を?その頃にはもう日本に戻っていたのに」
『…食わず嫌いは良くない、と言ったのは君だろ』
日本開催の世界選手権。
FSの公式練習を終えたオタベックの元に、現在は京都の大学を卒業して、東京の実家に戻っていた守道から電話がかかってきた。

あのモスクワでの再会から、時折2人は連絡を取り合うようになった。
互いの近況や写真の話など、スケートとは無関係な彼との他愛もない会話やメールは、オタベックの密かな息抜きであり楽しみでもあったのだ。
人をからかう事を除いて、基本余計な口を挟まない守道だが、肝心な所で的確な助言のようなものを与えてくれる。
そんな守道の心遣いは、ほんの少しだけ癪だと思いつつも、かつて彼の言葉で怪我をした純が、競技復帰を決めた理由が判るような気がした。
『出来るだけ悔いのないよう頑張って。会場には行かれないけど、TVで応援してるよ』
「ああ。有難う」
『何か随分素直じゃない?』
「貴方が減らず口を叩かなければ、俺だって普通に礼くらい言う!」
ちょっと見直そうとした矢先にこれだ、とオタベックはため息混じりに電話を切る。
しかし、相変わらずの彼の態度に幾分か緊張が解れたようで、未だ腰痛は治まらぬものの公式練習の時よりは軽い足取りで、控室に向かって移動した。

最終滑走者であるオタベックの渾身の演技に、守道の目は画面に釘付けになった。
決して腰の調子は良くないのに、何故ここまで滑る事が出来るのか。
そして、そんな彼に何故自分はこんなにも惹かれているのか。
「どうして、俺は会場にいなかったんだろうな…いや、かえって良かったのかも知れない」
演技を終え、リンクを出たオタベックの身体が崩れ落ちるのを見て、思わず守道は彼のコーチ達に代わって抱きしめたい衝動に駆られた。
自分が『英雄』の彼を支えようだなんて、おこがましいにも程があるというのに。
だけど。
TV放送が終わった後も、守道は暫しそのままでいたが、やがて何かを思いついたようにソファから立ち上がると、自室の棚からカメラその他機材を漁り始めた。
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