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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第3章 公私の国交


GPSアメリカ大会に参戦したオタベックは、日本の勝生勇利に次ぐ2位に入賞したが、試合後間もなく時折腰に違和感を覚えるようになった。
それでも騙し騙し練習を続けながら、第2戦目であるGPSロシア大会の為にモスクワ入りしたものの、抽選会前の公式練習中、腰をこれまでにない痛みに苛まれたオタベックは、コーチやトレーナー達と話し合った末、無念の欠場と相成ったのである。
「すまない」
「仕方ねぇよ。無理すんな。これでこっちは『サムライ』退治に専念できるってモンだぜ」
戦えなかった事をスマホ越しに詫びる友に、ユーリは穏やかに返した。
ロシア大会では、今季新たにシニアに上がった日本人選手がエントリーしており、昨季にジュニア時代のユーリの記録を全て塗り替えた彼との対戦を、ユーリはオタベックとの対決と同じ位楽しみにしていたのだ。
「残念だが、勝負はワールドまでお預けだな」
「おぅ、だからそれまでにはしっかり治しとけよ。じゃあな」
試合前なので手短に電話を終えたオタベックは、ホテルのベッドに寝転がると大きく息を吐いた。
今後を考えれば賢明な判断だと理解しているものの、『ソルジャー』としては、敵前逃亡したような気分になっていたからである。
情けなさと消えない腰の疼痛にオタベックが顔を顰めていると、コーチから電話が鳴った。
曰く、ホテルのロビーに在ロシアのカザフスタン大使が訪問に来ているという事で、オタベックは心なしか重い身体を起こすと、ロビーラウンジへと向かった。
「わが国の若き英雄。久しぶりですね」
「この度は、申し訳ありません」
「これがシーズンの前半で良かった、と前向きに考えましょう。ところで…明日の夜は、予定はありますか?」
オタベックが目を瞬かせていると、大使は言葉を続ける。
何でも、大使が若い頃から懇意にもしている外国の大使主催のレセプションがあり、オタベックにも参加して欲しいという事だった。
正直気は進まなかったが、スポーツ方面に明るく、普段から世話になっているこの大使の誘いを断るのも憚られたオタベックは、承諾の返事をする。
「では明日の夜、迎えに参ります。会場は、日本大使公邸です」
「日本…」
大使の口から発せられた国名に、一瞬だけオタベックの瞳孔が開いた。
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