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【YOI夢】ファインダー越しの君【男主&オタベック】

第1章 不穏な出会いと、その後で


【プロローグ】

いつだって俺の大切なものは、俺の手をすり抜けていく。

『心配するな守道、伯父さん達がついてる。今日からここがお前の家だ』
幼い頃に事故で両親を失った時も。

『僕は、スケートの世界で生きていく事にした。せやから、もうゼミには戻らへん。守道、有難う。…ごめんな』
そして、大切な先輩がゼミを去った時も。

自分の事すらままならないのに、他人を思い通りにするなど傲慢も良い所だが、それでも何故よりによって俺からその人を奪うのだ、と考えてしまう自分がいた。
完全に断ち切る事が出来れば楽なのだが、切れそうで切れないそれらの縁は、未だ俺を繋ぎ留めようとしてくる。
否、彼らと絶縁するのを心の何処かで拒んでいる自分の滑稽さが、我ながら哀れだ。

先輩が行く筈だったロシアのピーテル(サンクトペテルブルク)に留学した俺は、勉学で結果を出す事を除いては、淡々と日々を過ごしている。
確かにそれなりに得るものはあり、自分の成績にも自信はあるが、本来ならゼミにいた他の院生に国費留学させる所を、先輩はわざわざ俺を指名して、大学側に派遣留学の形まで取らせたのだ。
「僕に代わる人間が、お前しかおらんかったから」と言ってたけど、面倒見が良くてちょっとお節介な彼の真意は判っている。
先輩は誤解をしているかも知れないが、別に俺は彼らを憎んでいる訳ではないし、むしろ感謝すらしている。

ただ、彼らにとっての俺は、『異端分子の厄介者』でしかないだけで。
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