第1章 時をかけあう恋~ファーストコンタクト~
「………何…あいつ……」
佐助が走っていくのを家康は見届け、深くため息を吐いた。
この雨のなか、傘を持たせてくれたのは助かったが、待つ義理はない。
だが、見慣れない景色に、どこに行けばいいかもわからないし、佐助が言った「2018年」というのが気になり……仕方なく佐助が戻ってくるのを待つことにした。
そして10分後
「……はぁ、はぁ…………お待たせしました。どうぞ。」
全速力で家康の元へと戻ってきた佐助。乱れた息を調え、走るときには持っていなかったビニール傘を、家康へと差し出す。
「………何?」
「この雨なので、取り急ぎ傘を買ってきました。俺の傘だと小さいですし、どうぞこちらの傘を。」
「いや、別にこの傘で大丈夫。あんたがその傘使えば。」
「そうですか?ではお言葉に甘えて……あと下着類もコンビニのものですが、一応買ってきました。ずぶ濡れですし、そのままでは風邪をひいてしまいます。ここから歩いて10分ぐらいのところに、俺がお世話になっている家があるので、お風呂に入って着替えてください。」
そう言って佐助は、傘を持っている手とは反対側に持っているコンビニのビニール袋を家康に見せる。
「(……確かに風呂には入りたいが……のこのこ付いていくのもな……)」
イマイチ現状を把握しきれていない家康は、佐助を信用していいものか悩む。
その心情が顔に出ていたのか、佐助は家康の心情を察知して佐助は口を開く。
「家に着くまでの間に、あなたが何故ここに居るのか、ご説明させていただきますので。どうか俺に付いてきてくれますか?『徳川家康』さん。」
佐助の真剣な眼差しに、今はこの男に頼るしかない。と家康は思い、「わかった」と短く返事をして、二人は歩きはじめた。