第8章 たすけてください
日曜日に、部屋の扉がノックされた。
他のヒーロー科の女の子達とは、少し話した程度。
先生の担当下にいると聞いて、少し羨ましかった。
いいな、と言ったら、どこが!?とびっくりされて、少し笑ってしまった。
もしかしたら、遊びに来てくれたのかな?とドアを開けると、全身真っ黒な人が一瞬で入ってすぐにドアを閉められる。
「」
「せ、先生!」
「いちいちうるさい」
「すみません……」
先生は殺風景な部屋を見渡して、
「慣れたか?」
と短く聞いてきた。
「先生!たすけてくださいっ!」
「っ!?」
私は懐かしさと寂しさと切なさと、その他色々な感情が混ざって思いっきり先生に抱きついてしまった。
「べんきょー!教えて下さいっ!」
「………」
「ど、どうしたんですか?」
「いや、その辺考えてなかったなと……。
ここ、結構高いんだわ、偏差値」
「…っ!!」
その単語に、なんとなく聞き覚えはあった。
偏差の度合いを示し、どのくらいが自分のレベルか指し示す…、とかなんとか…。
「どこらへんで躓いてんだ?」
「ぜ、ぜ、全部……」
「ぜんぶ」
先生はとても棒読みで鸚鵡返しをした。
「数学は、もう、中学からやり直さないとダメそうです…」
「………」
その顔は、完全に諦めているようで、私は縮こまる思いがした。
「しばらく補修だな…」
「お、お願いします…!」
泣きそうになるのを堪えながら、最後に現れた救世主にすがる思いだった。
「俺はスパルタだからな。
この後他の連中の補修もある。
しっかりついてこい」
「は!はい!」
私は気合いを入れて、用意して貰った勉強机に向かった。